「2013年1月」のブログ記事

札幌の税理士ブログ 初心者でも分かる就労支援会計入門講座 その3 ~ 「就労支援事業」と「福祉事業活動」 ~

さて、障害者のための就労支援事業としてパン工場を営むA社を例にとって、説明を続けることにします。

 

利用者、つまり障害者自立支援法に基づくサービス支援を受けながらパン工場で働き工賃を受け取る障害者達

 

 

職員、つまり利用者をサポートする人達

 

については前回説明しました。

 

そして、利用者の工賃は、基本的にパン工場の収入から経費を差し引いた利益を元手として分配される、つまりパン工場の利益が高ければ利用者が受け取る工賃はアップする(利益が低ければ逆にダウンする)こと、その利益を適切に算定するための手段として就労支援会計基準が存在すること、についても前回説明した通りです。

 

さて、次の議論に入ります。

 

職員が受け取る給料は、どうやって賄われるのでしょうか?

利用者と同じく、パン工場の利益から分配されるのでしょうか?

 

いいえ、違います。

職員が受け取る給料は、障害者自立支援法に基づく障害福祉サービス費によって賄われます。

 

分かりやすく説明すると、医療サービスにおける医療費のようなもの、とお考え下さい。

私たちが病気や怪我をすると、病院に行って治療を受けます。

そして最後に病院の窓口で、患者負担額(総額の1割~3割)を支払います。

病院は毎月10日までに、その前月の医療費を集計して、残り7割~9割分を国に請求します。

国はその請求内容をチェックした後、約2ヶ月後に病院に対してその請求額を支払います。

 

障害福祉サービスにおいても、これとほぼ同じことが行われております。

つまり就労支援事業を行うA社は、そのパン工場で働く利用者数などを元に、障害福祉サービス費の請求を毎月行います。

この収入を原資として、職員に対する給料が支払われます。

 

察しの良い方はもうお気付きでしょうが、このA社は、つまり二つの事業部門を有することになります。

 

まず一つ目は、パン工場、つまり就労支援事業です。

これは何度もくどいようですが、パン工場がパンを製造して販売し、その販売収入から工場の諸経費や利用者工賃を支払います。

 

そして二つ目は、このパン工場をサポートする福祉事業です。

これは障害者自立支援法に基づき国から支給される障害福祉サービス費を原資として、職員の給料、本部事務所の家賃・光熱費など諸経費を支払います。

 

就労支援事業は、利用者の工賃を支払う事業でありますから、如何にして利益を出して利用者に配分するか、ということが重要になります。

福祉事業は、A社そのものの運営でありますから、きっちりと利益を出すことを求められます。

 

つまりA社の経営者は、二つの会社を同時に運営するのと同様の経営センスを求められるわけです。

これが就労支援の難しいところでもあり、かつ醍醐味でもあります。

 

これら二部門をドンブリ勘定にしてしまうと、例えばこういった状態になりかねません。

 

【具体例1】

パン工場が実は大赤字で、利用者工賃は事実上福祉事業部門の利益から捻出されていた。

 

【具体例2】

パン工場は黒字、福祉事業は赤字、つまりパン工場の利益を利用者工賃として適切に配分せず、本部の経費支払いに流用されていた。

 

上記のようなことは本来あってはならず、これら二部門はそれぞれ独立採算制で資金繰りを回すのが理想的な姿であることは言うまでもありません。

札幌の税理士ブログ 初心者でも分かる就労支援会計入門講座 その2 ~ 就労支援会計とは何か? ~

そもそも「就労支援会計」って、一体何でしょうか?

なぜそんなものが必要なのでしょうか?

 

分かりやすい具体例を挙げましょう。

(注:出来るだけ初心者に分かりやすく説明することを最優先しておりますので、あまり細かい部分は突っ込まないで下さいm(_ _)m)

 

A社、という会社が、就労支援事業としてパン工場を経営し、複数の障害者達がそこで働いております。

この障害者達は、就労支援事業という制度利用する方達なので、以後利用者と呼びます。)

 

そのパン工場は、工場の賃借料や光熱費を支払い、かつ小麦粉などの原材料費などを仕入れ、そしてパンを製造して販売しております。

 

今月の業績は、こんな感じでした。

 

1.売上高 100万円

2.諸経費 原材料仕入れ 40万円

        工場家賃    10万円

        光熱費       5万円

        その他経費   30万円

3.差引利益 15万円

 

みな一生懸命頑張ったので、15万円の儲けが出ました!

 

この15万円の儲けが、利用者に対して支払われる工賃となります。

 

障害者自立支援法、という法律の名称は、皆さん一度はお聞きになったことがあると思います。

(今年4月から「障害者総合支援法」という名称に変わります。)

この法律は、その名の通り、障害者が社会的・経済的に自立した生活を営むことを目指すための法律です。就労支援事業は、その一環として、利用者つまり障害者が働く場を設け、そこで得た利益を利用者に分配する、という趣旨なのです。

 

つまり、就労支援事業がたくさん儲けを出せば出すほど、利用者は多くの工賃を受け取ることが出来ますし、逆に儲けが少なければ利用者の工賃は少なくなるのです。

そりゃいくらなんでも障害者に対して厳しいんじゃないの!?という人権擁護的な批判も多く、各地で訴訟が頻発した時期もあったのですが、その辺に関する見解はここではノーコメントとしておき、まずは法律でそうなっているんだから、それに従っていきましょう、というスタンスで説明を続けます。

 

要は、パン工場の儲けをきちんと把握しなければ、利用者に正しい工賃を支払えないのです。

 

パン工場の儲けは、きちんと全て利用者工賃として分配しなければなりません。

正当な理由なく、その儲けを一部残しておくようなことは原則として許されませんし、ましてや他の誰かがその儲けを横領して私腹を肥やすなんてことは断じてあってはなりません。

 

そして更に、いわゆる利用者をサポートする立場の人達管理者、サービス管理責任者、職業指導員、生活支援員など、以後職員と呼びます。)は、このパン工場をもっともっと活性化させ、利用者が働きやすい環境を整え、そしてパン工場がもっと儲けを出すように頑張らなければなりません。

儲けが大きければ大きいほど、利用者工賃は増えます。インセンティブが高ければ高いほど仕事に対する意欲は高まりますし、利用者の社会的自立に繋がります。

 

と、ここまで説明したところで

「んなもん、普通に会計やれば済む話じゃないの?わざわざ就労支援会計なんて特殊なこと、やる必要ないじゃん。」

という声が聞こえてきそうですが、

 

このパン工場を営むA社が、もしパン工場(就労支援事業)だけじゃなくて、他の事業も営んでいた、としたら、どうでしょうか。例えば居宅介護とか、児童デイサービスとか、あるいは一般的な飲食店・建設業のような営利事業とか。

 

それら複数の事業を一緒くたにしてドンブリ勘定してたら、利用者工賃の適正な算定なんてできませんよね。

 

だから、①会社全体(ドンブリ)の中から、パン工場の売上や経費だけを抜き出し②そのパン工場の儲けを計算して③利用者工賃をいくらにするか、あるいは④もっと工賃を増やすためには何をどう改善すべきかを検討する必要があるのです。

 

そして更に、この就労支援事業は、障害者自立支援法に基づく事業ですので、一定の基準を満たして都道府県の「指定」を受ける必要があります。

都道府県は、その指定をした事業所がきちんと事業を運営しているかどうか、定期的にチェックします。そこで就労支援事業については、その事業で稼いだ儲けをきちんと利用者工賃として支払っているかどうかが大きなチェックポイントとなります

ちゃんとしてなければ、当然ながら怒られますし、あまりにひどいと指定を取り消されます。そのチェック判断基準として機能するのが、つまりは就労支援会計なのです。

札幌の税理士ブログ 初心者でも分かる就労支援会計入門講座 その1 ~ はじめに ~

今回からしばらくの間、就労支援事業(いわゆる就労移行支援、就労継続支援A型・B型のことです。)に関する会計の仕組みについて解説してみようと思います。

 

障害福祉に携わる事業者様が就労支援事業を運営するにあたって、あるいは我々職業会計人が障害福祉事業者を関与するにあたって、真っ先に押さえておくべき重要な事項なのですが、何故かこれを詳しく解説した書籍等は無きに等しい状態です。

まあ、そもそも書籍にしたところで重版が見込めるほどニーズは無いのかもしれませんが…。

 

ならば、あえて私がシリーズ化して解説してみましょう、と思った次第です。

 

さて、まずは厚生労働省が定めた会計基準を学ぶ必要があります。

 

就労支援の事業の会計処理の基準

http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/10/tp1002-1.html

 

というのが正式名称です。

 

上記URLをご覧になってお分かりの通り、中身はさほどボリュームがありません。

各種図表のひな形などがズラリと並んでおり、文章の量はたいしたことありません。税理士・会計士であれば10分前後で読みこなせる内容です。ただし、その前提として就労支援事業に関する知識を有していれば、の話ですが。

 

もしかしたら、案外そこが高いハードルになっているのかもしれません。

 

事業者様は、就労支援に関する知識は豊富です。

でも、会計に関する知識は疎い。

 

税理士・会計士は、会計に関する知識は豊富です。

でも、障害福祉の制度全般、就労支援事業に関する知識は疎い。

 

「いやそんなことはない、私はどっちも詳しいぞ!」

というお叱りの声が聞こえてきそうですが、でも、そのような方は極めて稀な存在でありましょう。

 

しかし、そのハードルを乗り越えて深く勉強していきますと、なかなかどうして、これが結構面白いのです。

「ただ障害者がパン工場とかで軽作業してるだけだろう。」などと侮るなかれ。就労支援というものは、誠に奥が深い。

 

というわけで、この高いハードルを取り払うためには、まず

 

1.就労支援ないしは障害者自立支援の制度全般に関する知識

 

をしっかりと理解した上で(事業者様はとっくに理解済みでしょうが)、

 

2.なぜ独自の会計制度が必要なのか?

 

という、制度自体の前提趣旨をも併せて理解する必要があります。

 

そして更に、会計というものは、税務と切っても切り離せない関係にあります。

就労支援事業は、法人税法上どのような取り扱いになるのでしょうか。

そして利用者(つまり就労支援事業を利用して働く障害者のことです)が受け取る工賃などの対価は、どのような税金がかかるのか?

 

さて、全部で何十回のシリーズになることやら。

腕が鳴ります。乞うご期待。

札幌の税理士ブログ 新年のご挨拶 ~ 平成25年度は弊社において「障害福祉元年」とすることをここに宣言します。

皆様、新年明けましておめでとうございます。

 

いきなり唐突ではございますが、今年の弊社は、福祉、なかでも特に障害福祉に関する諸々のご支援(事業所様及び当事者様への関与)を最大のテーマとすることをここに宣言します。

 

何をいきなり?と思われる方もいらっしゃるかと存じますが、実は私個人の障害福祉に対する思い入れはかなり以前から強く有していたものであります。その主な理由は、私のプライベートに関わる部分がございますので、公の場での詳細な説明は当面控えさせて頂きますが、とにかく、今回のこの宣言が決して単なる思い付きではなく、ましてや伊達や酔狂でもないこと、かなり本気であることだけは強調しておきたいと思います。

 

昨年末、弊社スタッフに「次の一年は障害福祉でいくぞ!」と語ったところ、スタッフ達は「分かりました。ではしっかり勉強していきます!」と賛同してくれました。

弊社は毎週月曜日の早朝にミーティングを行っておりますが、今年一年は障害福祉に関する知識等を全員で深く共有するための勉強会を兼ねたミーティングにするつもりです。

 

主なご支援の内容は、次の通りです。


 

1.事業者様へのご支援

 

障害者自立支援法の施行に伴い、障害福祉事業に関わる事業者様は、社会福祉法人だけではなく、NPO法人や営利法人(株式会社・合同会社)など極めて多岐に渡り、かつその支援内容もバラエティに富んでおります。

そしてその一方で、現場の対応を第一義とする余り(それは当然のことではありますが)、就労支援の事業の会計処理の基準、新社会福祉法人会計基準、新NPO法人会計基準など諸々の会計基準、そして各法人ごとの特殊な税務処理など複雑かつ難解な税務会計制度への対応が、業界全体として後手後手に廻っている現状であることは否定できないと思います。

 

我々職業会計人の業界におきましても、まず福祉の制度というものが非常に複雑であり、その全貌を理解することに多大な労力を要するため、これに精通した人材が不足していることは否めません。

クリニックや有床病院、調剤薬局など医療に特化した会計事務所は多々ございます。

また、特に近年は「介護への特化」が一つのブームとなっており、介護に関する様々な勉強会、支援グループの結成など活発に行われております。

 

しかし、障害福祉に特化した税理士、会計事務所は余り多くありません。

何故でしょうか?理由は多々ありましょうが、それが現状です。

 

私、そして弊社は、あえてその現状に風穴を開け、革命を起こします。

障害福祉に精通した税理士法人として、全国にその名を轟かせます。

 

弊社は既に数社の事業者様を関与させて頂いております。

今年は、この数を更に増やします。

来年以降も、もっともっと増やします。



 

2.当事者様へのご支援

 

「当事者」とは、障害者本人及びその扶養者を指します。

 

弊社は、昨年初に弁護士・司法書士の各法人と同一フロアにてワンストップサービスを提供する体制を構築し、特に相続の分野において強固な連携を推進しております。

 

相続の分野は、相続だけではなく、それに関連する生前贈与、遺言などの諸対策、成年後見への対応など多岐に渡ります。

弊社フロアには税理士、弁護士、司法書士、行政書士など複数の国家資格者が在籍しております。この分野における支援体制は道内随一であるものと自負しております。

当事者様へのご支援は、主に扶養者(つまり親)亡き後の財産管理・後見事務に関するものが中心となるであろうと思われます。最近特に「福祉信託」が注目されております。道内ではまだ耳慣れないキーワードですが、今後徐々に浸透されていくであろうと思われます。

 

当事者様へのご支援は、事業者様との連携がポイントとなります。

弊社は、まず上記1記載のとおり事業者様への関与を強化し、そして事業者様と共に当事者様への関与を少しずつ深めていきたいと考えております。


 

以上、年初の宣言といたします。

本年も引き続き、一同全力を挙げて業務に邁進する所存でございます。

ご愛顧のほど宜しくお願い申し上げます。

 

税理士法人ノースアクティブイノベーション

代表社員 税理士・行政書士 前島 治基

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